1196号 労働判例 「日本郵便(時給制契約社員ら)事件」
              (最高裁第1小法廷 令和2年10月15日 判決)
無期契約正社員と有期契約労働者との各種手当にかかる労働条件の相違が
労働契約法20条に違反すると認められた事例
時給制契約社員らに対する各種手当の不支給と労契法20条

 解 説
 〈事実の概要〉
 本件は、Y(日本郵便株式会社、1審被告)との間で期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結して勤務している時給制契約社員であるXらが、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している労働者(正社員)とXらとの間で、年末年始勤務手当、病気休暇、夏期休暇・冬期休暇等に相違があったことは、労契法20条に違反するものであったと主張して、Yに対して不法行為に基づき損害賠償を求める請求をしたものである。原審(東京高判平成30・12・13労判1198号45頁)は、@労契法20条に補充的効力はない、A労契法20条の不合理性の判断は、有期契約労働者と無期契約労働者との賃金総額を比較することのみによのではなく、当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきである、B外務業務手当、早出勤務等手当、祝日給、夏期年末手当、夜間特別勤務手当、郵便外務・内務業務精通手当については不合理とはいえない、CYにおける年末年始勤務手当、夏期休暇・冬期休暇、病気休暇について、正社員と時給制契約社員らとの労働条件の相違は労契法20条にいう不合理なものと認められる等とした。これに対して、XYが上告していた。
 〈判決の要旨〉
 最高裁は、各種手当ごとに次のように判断している。(1)Yにおける年末年始勤務手当
は、郵便の業務を担当する正社員の給与を構成する特殊勤務手当の1つであるが、12月29日から翌年1月3日までの間において実際に勤務したときに支給されるものであることからすれば、同業務に従事したことに対してその勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するものであり、年末年始勤務手当は、所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり、支給金額自体も実際に勤務した時期と時間に応じて一律である。このような年末年始勤務手当の性質や支給要件・支給金額に照らせば、郵便の業務を担当する時給制契約社員にも妥当するものであり、労契法20条にいう不合理なものと評価できる、(2)病気休暇については、上記正社員が長期にわた り継続して勤務することが期待されることから、その生活保障を図り、私傷病の療養に専念させることを通じて、その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられるが、上記目的に照らせば、郵便の業務を担当する時給制契約社員についても、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、私傷病による有給の病気休暇を与えることとした趣旨は妥当するとして、(その日数につき相違を設けることはともかく)、これを有給とするか無休とするかにつき労働条件の相違があることは不合理なものと評価できる、(3)Yに おける夏期冬期休暇は、有給休暇として所定の期間内に所定の日数を取得することができるものであるところ、郵便の業務を担当する時給制契約社員であるXらは、夏期冬期休暇を与えられなかったことにより、当該所定の日数につき、本来する必要のなかった勤務をせざるを得なかったものといえるから、上記勤務をしたことによる財産的損害を受けたものということができる。このように、本件でも、各賃金項目の制度趣旨・目的に照らして合理性の有無が判断されている。
 労契法20条は、パ−トタイム・有期雇用労働法8条に吸収され、同法は令和2年4月から施行されている(中小企業については令和3年4月から施行)が、同法の解釈にあたっても本最高裁の判決は、重要な意義を有すると思われる。

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