1147号 労働判例 「わいわいサ−ビス事件」
              (大阪高裁 平成29年7月27日 判決)
多重請負関係のあるなかで倉庫での業務をこなしていた者の労働者性が争われた事例
多重請負関係における労働者性

 解 説
 〈事実の概要〉
 Y社(被告・被控訴人)は、軽車両等運送事業、自動車運送取扱事業等を行う会社であるが、株式会社A社がB社に請け負わせた配送業務をさらに請け負わせた配送業務を下請けとして請け負っていた。Y社は平成24年12月から、B社から請け負った配送業務の一部をX(原告・控訴人)に委託し、Xは、自己の所有する車両を使って配送業務を開始した(X・Y間で請負契約が成立していたことには争いはない)。ところで、Xは、平成25年1月頃、B社の従業員から、豊中市所在のA社の倉庫(豊中倉庫)での作業を打診され、同月16日から豊中倉庫において、荷物の収集や車両の手配等の作業(倉庫作業)を行うようになった。Y社からXへの報酬の支払いは、配送業務に関しては走行距離に応じて、倉庫作業については労働時間に基づき支払われていた。
 Xは、平成26年9月10日以降、配送業務を行わなくなり、倉庫作業のみを行っていたが、27年3月27日、Y社代表者から、今日から豊中倉庫には行かなくてよい旨告げられた。さらに同年4月15日には、B社からY社との請負契約を解除する旨の通知があり、以降、B社からからの発注がないこと、B社からからの発注がなくなったことによるX・Y間での請負契約の終了については口頭で通知済みであるが、念のため本書面で通知すること、XがY社との間の契約は雇用契約であると主張しているのでY社は、予備的に同日付けで解雇の通知をした旨の記載がなされた通知書を送付した。
 本件は、XがYに対して、雇用契約上の権利を有することの確認と賃金の支払い等を求めたものである。争点は、倉庫作業に関してX・Y間で雇用契約が成立したか否か、成立した場合のその内容、また成立が認められた場合には解雇後の賃金請求権の可否、等である。1審(大阪地判平成28・5・27)は、@Xが倉庫作業を行うに当たり、業務内容や労働条件等はB社やA社から指示・説明がなされたが、Y社は行っていない、AB社はXに倉庫作業を依頼したが、X一人で行わなければならないと考えていたわけでもなく、X以外の者が代わりに行うことを容認していた、特に休憩時間は設定されておらず、倉庫外に出ることも禁止されていなかった、Xの勤務管理はA社が設置したタイムカ−ドにより行いB社が管理していた(Y社への提示はない)、休憩時間がなく、1日も休日がないことについてA社の従業員に訴えることはあったが、Y社への訴えはなかった。B倉庫作業の時給について不満があるとXがY社のDに相談したことからY社がB社と交渉し時給が850円から1200円に引き上げられた(100円はY社の収入・手数料でXの受取は1100円)のような事実認定のもとで、@勤務時間の指示はB社やA社からのものでY社の指揮命令によるものではない、AY社がB社やA社の指示に従って業務を行うように指示していた特段の事情もない、BXは、B社らと調整すれば勤務時間を変更したり別の者を業務につかせることが可能であったと認められるのであり、管理されることが通常である労働者の立場とは異なるものであった、C豊中倉庫での20時から翌朝8時までの就労についてXの時間的拘束性を認めることはできない、DY社は、配送業務と同様に倉庫業務についてもXに請け負わせていたと認識していた等と述べてXの請求を棄却した。Xが控訴していたのが本判決である。 
 〈判決の要旨〉
 裁判所は、次のように判断してXの請求を棄却している。@労働時間についてB社らの指示により20時から翌朝8時まで豊中倉庫において就労する定めが在り、業務遂行における時間および場所の拘束がある、A倉庫作業の内容や遂行方法についてB社からの指揮監督に服していた、B報酬も一定時間労務提供したことに対する対価といえる、CY社代表者は、Xが従事していた倉庫作業の実情をよく知らず、他の者を雇ったり倉庫作業以外のことを自由に行えたということを知り得たか疑問である、以上の点から、Xは労基法・労働契約法における労働者に該当する。しかし、一転、XとY社との間に雇用契約が成立したとは認められない、とする。倉庫作業に従事するように働き掛けたのはB社であり、Xと雇用契約を締結したのはむしろB社またはA社であると解する余地があるというのが高裁の結論であるが、Xの労働者性が認められても、一体誰に雇われていたのか、釈然としないところが残る判決である。労働者性が認められる以上、倉庫作業で負傷した場合、当然労災として補償の対象になるが(給付は政府から支給される)、誰のところの労災となるのであろうか。

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