1146号 労働判例 「イオンディライトセキュリティ事件」
              (千葉地裁 平成29年5月17日 判決)
複数名ないし単独で警備体制を採っていた警備会社の警備員の、
夜間の仮眠・休憩時間等の労働時間性が争われた事例
警備員の仮眠・休憩時間等の労働時間性

 解 説
 〈事実の概要〉
 X(原告)は、警備業務を主たる事業とするY社(被告)に雇用されて、平成23年9月以降、P店(平成25年1月ないし同年8月)、R店(平成25年9月ないし平成26年5月)、T店(平成26年6月ないし平成27年5月)において、警備員として就労したが、本件は、夜間の仮眠・休憩時間等が労働時間に当たるとして、過去2年分の時間外労働に対する割増賃金(約96万円)およびその遅延損害金、労基法114条の付加金、Xに対する配転命令・業務命令(警備業務から事務業務への配転、教本の文字起こし作業の業務命令)がパワ−ハラスメントに当たるとして、その損害賠償(500万円)等を求めた事例である。
 本件の争点は、@本件各仮眠・休憩時間等が労働時間に該当するか、AR店における着替え・朝礼の時間が労働時間に当たるか、B本件での配転命令・業務命令がXの人格権を侵害する不法行為に当たるか、である。Bの点については、Xの業務に遂行について、複数の同僚および取引先から勤務態度ないし言動について、苦情があり、異動について業務上の必要性があった等として、不法行為の成立を否定している。Bの点については、紙数の関係で、これ以上は触れない。@とAの点についてみていきたい。
 〈判決の要旨〉
 裁判所は、まず、P店における仮眠・休憩時間について、次のように述べる。P店における警備は、1名体制であり、警備員は、機器類の発報時には即応することが求められていたこと、仮眠時間はPの防災センタ−内の控室内とされており、Yの警備員は本件仮眠時間の間も防災センタ−を離れることが許されていなかった、寝巻に着替えて仮眠をとることもなかったこと、また、実際に、Xが、P店で業務に従事していた8か月間に仮眠時間中に緊急対応のために出動したことが少なくとも4回あったこと等から、P店における仮眠・休憩時間は、全体として労働からの解放が保障されていないので労働時間に該当する。次に、T店における仮眠・休憩時間について、次のように述べる。T店の夜間の警備体制は、3名の複数であり、勤務表には、3名のうち常に1名は勤務時間となるように組まれており、さらにY作成の手順書には仮眠者を起こして対応を求める旨の明示の記載はなかったが、本件手順書の記載内容、Yと再委託者との警備計画書の記載内容を勘案すれば、本件手順書は、防犯警報が発報した場合には、勤務時間中の警備員1名に対して、仮眠時間または休憩時間に入っている警備員に対して現場対応を求める旨を記載したものであると解するのが相当である等と判示して、労働契約上の義務としては、Xは、T店またはその近辺における待機と発報等に対して直ちに対応することが義務付けられていた、したがって、やはりT店における仮眠・休憩時間も労基法上の労働時間に当たると結論づけている。
 さらに、R店における着替え・朝礼に要した時間について、始業は午前8時であったが、毎日午前7時35分から事業所内の待機室において朝礼が行われており、警備員は全員制服を着用して朝礼に出席することが義務付けられていた等として、着替え・朝礼の時間も労働時間に当たるとしている。
 なお、本件訴訟の提起以降のYの対応、割増賃金の不払いによりXが受けた不利益を総合すると、付加金という制裁を課すことが相当でない事情またはこれを減額すべき事情があるとは認められないとして、未払い割増賃金および着替え・朝礼に要した時間についての未払い割増賃金と同額の付加金が認容されている。
 不活動時間であっても労働から完全に保障されていない場合は労基法上の労働時間に当たるとした最高裁判例(大星ビル管理事件・最1小判平成19・10・19)を忠実に踏襲した判断といえる。

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