1130号 労働判例 「国・川越労働基準監督署長(C工務店)事件」
              (大阪地裁 平成28年11月21日 判決)
宮大工として働いていた大工の転落事故について、労災保険法の労働者性が争われた事例
宮大工の労働者性

 解 説
 〈事実の概要〉

 本件は、X(原告、Kの妻)が、夫であるKの転落事故(平成26年4月29日、C工務店加工場の屋根の上でC工務店経営者Cらとともにトタンの取付け工事に従事していた際に屋根から転落して死亡した事故)について、川越労基署長が、Kは労災保険法の労働者ではないとして労災保険法の遺族補償給付等の不支給処分をしたことに対して、その取り消しを請求したものである。
 なお、Xは、京都下労基署長に対して、労災保険特別加入者としての遺族補償給付等の支給を請求して認められている。
 Kは、平成6年頃から社寺建築を専門とするB工務店で宮大工として稼働していたが、23年7月頃、独立して24年2月、京建労労働保険組合に労災保険法35条による一人親方等として第2種特別加入をしていた。Cは、C工務店の商号で宮大工を営む者であるが、25年11月頃、知り合いの設計事務所から香川県小豆島所在のF神社の屋根・床の修理工事を請け負い、26年1月頃、Kに対して、1日2万円の支払いを条件に同工事に誘ったところ、Kはこれに応じた。26年2月に大雪が降り、本件加工場の屋根が雪の重みで倒壊したため、CがKに対して、F神社の修理工事とは別に、1日2万円の支払いを条件として、本件加工場の倒壊した屋根の解体撤去工事も依頼したところ、Kはこれに応じた。本件事故は、平成26年4月29日、C工務店加工場の屋根の上でC工務店経営者Cらとともにトタンの取付け工事に従事していた際に雨が振り出したため、Cが、「作業を中止しよう。念のためロ−プを取ってくるんで、動かんといてや」と言って屋根から降りたとき、Kが屋根から道路に転落して、後に、頭部外傷により死亡したものである。
 争点は、Kが労災保険法の労働者に該当するか否かである。
 〈判決の要旨〉
 裁判所は、結論として、Kが労災保険法の労働者に該当することを否定しているが、次のように判示する。
 @労災保険法は、適用対象となる労働者の定義規定を置いていないが、労災保険制度が、使用者の労基法上の労災補償義務を前提にその責任保険としての性格をもつとともに、労災保険法の給付が労基法上の災害補償事由が生じた場合に行われること(労災保険法12条の8第2項)からみて、労災保険法の労働者とは、労基法9条にいう労働者と同一であると解するのが相当である。
 Aしたがって、労災保険法の労働者性も、1)労働が使用者の指揮命令の下で行われているか否かという労務提供の形態と、2)報酬が提供された労務に対するものであるか(報酬の労務対償性)の基準を総合考慮して行う、としている。なお、上記1)、2)の基準を併せて「使用従属性」と呼ぶ。
 B上記1)、2)の基準のみで使用従属性の判断が困難である場合、労働者性の判断を補強する要素として、事業者性の程度(機械、器具の負担関係、報酬の額、損害に対する責任、商号使用の有無等)、専属性の程度、その他の事情(報酬について、給与所得として源泉徴収を行っていること、労働保険の適用対象としていること、服務規律の適用)を勘案して総合判断をする必要がある。
 CKがCから仕事を依頼された際に、これを断ることが困難であった事情はなく、KにはCからの依頼に対して、諾否の自由がなかったとはいえない。また、Kは、業務の内容および遂行方法について、Cから具体的な指揮命令を受けていたとはいえない。
 DKは、甲野工務店の商号を使用していたのであり、平成23念7月以降、事業者として宮大工を行っていた。
 本件では、Kは、労災保険法35条による一人親方等として第2種特別加入をしていたというのであり、特別加入の意義を示す事例でもある。

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