1123号 労働判例 「ジャパンレンタカー事件」
              (名古屋高裁 平成29年5月18日 判決)
22年間反復更新してきたレンタカー会社のアルバイトに対する雇止めが
労働契約法19条に違反して無効とされた事例
アルバイトに対する雇止めの有効性

 解 説
 〈事実の概要〉

 本件は、自動車の貸付業、遊戯場の経営等を行う会社Y(一審被告)にアルバイトとして22年間にわたり期間の定めのある雇用契約を更新されて雇用されていたX(一審原告)がYから雇止めされ、それは違法であるとして地位確認等を求めた事例である。
 Y社の営業所ではおおむね正社員が5名程度、アルバイトとして稼働していた労働者が15名程度働いていた。Xは、平成4年4月1日までにY社と期間の定めのある雇用契約を締結してアルバイト従業員として稼働しはじめたが、同月から20年頃までは6か月に1回、同年以降は2か月ごとに雇用契約書の更新がなされた。最終の雇用期間は26年12月20日となっていた。Xは、当初、A1営業所で稼働し、平成6年1月からA2営業所、同年3月からはA3営業所、平成20年10月からはA4店、平成21年2月頃からA5店に異動した。Xは、Yの営業所でレンタカーおよびカラオケに関する業務に従事してきた。A5店の従業員は、昼間は専ら正社員4、5名で勤務していたものの、週末の夜間は3、4人、平日の夜間は2、3人でシフトを組み、専らアルバイト従業員が働いていた。
 平成26年10月24日午前3時前にEと名乗る男性外5名がカラオケ室に入室したが、そのうちの1名が携帯電話を落として帰った。Xは、それを拾ったが、顧客の紛失物専用の保管場所に置かず、自分のジャンパーのポケットに入れて帰宅し、携帯電話のことを忘れてしまい、そのまま帰宅した。帰宅後は、ジャンパーを車内で脱ぎそのまま車内に残して家に入った。Xは、同日から同月26日まで勤務日ではなく、体調を崩して家で休んでいた。平成26年10月27日、Xは、出勤するため車内からジャンパーを取ったところで携帯電話の存在に気がついた。その携帯電話のカバーを開けるとポケットに5千円札等が挟まれており、Xは自分が窃盗をしたと疑われるのではないかと怖くなり携帯電話を自宅に残したまま出勤した。その後、自宅に戻ったのち、警察に携帯電話を届けた。Xは、この日の夜勤は連絡の上で欠勤した。同月30日、医師の診察を受けたところ、過労、軽度うつ状態、睡眠障害のために2週間の休養が必要との診断を受けた。その旨Yにファックスで連絡し、2週間休養し、11月13日から出勤する旨、Bに伝え了承を得た。しかし、F店長、CにはXが13日から出勤する旨は伝わっておらず、同月20日までに入っていたXのシフトの代わりとして、他のアルバイト従業員がシフトに入っていた。
 最終の雇用期間となっていた26年12月20日が経過し、Xが契約の更新を求めていたが、Yが拒否して、契約は終了したとされた。Xの主張は、@労働契約上の地位確認、A26年12月からの賃金請求権に基づく賃金の支払い、BYが健康保険・厚生年金保険・労働保険の届出義務があったのに怠っていたことに伴う損害賠償の支払い、C未払い割増賃金の支払い、D付加金の支払い、である。一審(平成28・10・25津地判)判決後、Yが控訴していたが、控訴審では、@BCDについて原判決通り理由があるとして認容し、Aの不法行為に関連する損害賠償の支払いについては、一部認容し、その余は棄却している。
 〈判決の要旨〉
 本件でのX・Y間の有期労働契約は、更新を繰り返すことで、期間のない労働契約とほぼ同視できるものであった(労働契約法19条1号)。Xの携帯電話の忘れ物に対する対応、業務懈怠、睡眠障害等を理由としてなされた雇止めは客観的合理的理由とはいえず、社会的相当であるとも認められず、Yは従前と同一の労働条件でXの更新の申し込みを承諾したものとみなされる。
 Xは、平成4月に国民年金の被保険者になり、平成25年1月までの間に183万1300円の保険料を負担した。上記金額の2分の1については、Yの不法行為と相当因果関係がある(Xが求めた65歳になったら受給できたはずの年金給付相当額の支払いについては、認めず)。他方、慰謝料の支払いを命じる特段の理由はない、としてこの部分は棄却。なお、1日8時間を超える合意は無効であるとして(賃金日給1万2000円とされていた)、割増賃金算定における基礎時給は1500円(1万2000円÷8時間)となるとされている。
 杜撰な雇用管理が、法的紛争になると極めて煩わしい多様な問題を含むようになる例である。

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