1088号 労働判例 「ラボ国際交流センタ−事件」
              (東京地裁 平成28年2月19日 判決)
有期雇用社員の雇止めが労働契約法19条に照らし有効とされた事例
有期雇用社員の雇止めと労働契約法19条

 解 説
 〈事実の概要〉

 Y(被告)は、青少年の国際交流プログラムを運営することを目的とした公益財団法人であり、原告Xは、Yに有期雇用職員として雇用されていた者である。
 Xは、平成26年3月31日をもってYに雇止めされたが、Xは同雇止めの無効を主張してYでの地位確認、賃金等を求めていた。
 Xは、Yにおいて、高校留学プログラム(米国・カナダ)の企画運営等(留学業務)を行っていた。具体的には留学生を募集し、応募者の選考(面接・テスト等)を行って留学生を決定し、決定した留学生に対するオリエンテ−ションプログラムを作成・実施し、留学生のカウンセリングやプログラムの説明を行い、同時に渡航の情報収集・手配、指示をしていた。Xは、業務委託を経て、平成16年4月1日にYに、期間の定めのある嘱託雇用として採用され、以後更新を重ねてきた(通算で10年間、契約更新回数は11回に及んでいる)。
 Xは、留学業務の担当者、平成25年1月からは「責任者」として留学業務を一手に担っていた。YにおいてXが従事してきた留学業務に係る事業はYの重要な柱の1つであり、国際交流事業の北米交流参加費の収入に次ぐ収益を上げるような事業であった。
 〈判決の要旨〉
 裁判所は、次のように判断している。X・Y間での契約更新手続きについては、YのXに対する業績評価を前提に、業務内容および報酬等を当事者双方が確認のうえ行われたものであり、契約更新手続きが極めて形式的なものであったとは認められず、労働契約法19条1号ではなく、同条2号が適用される事案である。
 本件は、「当該有期雇用契約が更新されることについて合理的な理由がある」ものと認められる」事案であるが、Xの勤務態度について、不必要な残業を行っていた可能性が推認され、また、自らの業務遂行に過大な自信と評価を持っており、上司や他者への敬意と強調に欠けるところがあるとも指摘されている。Xの業務遂行に対するYの肯定的な評価がある一方で、他方、Xは上司からの再三に亘る注意にもかかわらず、業務を1人で抱え込みYと共有しようとはせず、さらに、契約上はXの業務として留学業務以外に「その他財団の諸業務のサポ−ト」が課せられているが、Xは多忙を理由にこれらのサポ−ト業務に協力しなかった。これらの点をふまえ裁判所は、Xは、担当業務の遂行能力には秀でたものがあったと思われるが、他の職員との協調性には問題が認められ、また、仕事を1人で抱え込む状態が長期間継続すると、なんらかの問題がXの担当業務に発生するとY全体として責任をもって適切に対処することが困難となっていたことは明らかであるとしている。結論として裁判所は、XY間の交渉が行き詰まったがゆえに結果として行われたやむを得ない措置というほかなく、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当なものとして有効であるとした。
 1年の有期の雇用契約を11回更新してきたケ−スについて、労働契約法19条2号を適用し、更新されることについて合理的な理由があるものと認めながら、雇止めに客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当なものとした事案であり、他の職員との協調性のなさが問題となった事案でもある。

BACK